事業譲渡に寄せて
母を亡くして、華桔梗を創った私は、令和5年4月、思いがけず、夫を亡くした。
母は癌だった。
もう手の尽くしようがなく、命に限りを告げられた人だった。
でも夫は違う。
死を意識するような病気でもなかったし、自殺が危惧されるうつ状態も随分改善していた。
でもまだ療養中だった…
まだゆっくりと療養させたかった…
夫は、明らかに自殺ではないと断言できるが、ある日突然、何の前触れもなく、この世を去った。
今でも私の脳裏にはあの光景が焼き付いている。
夫が自宅で冷たくなって朝を迎えた日の事だ。
私は自分の壊れかけている心を救おうと、様々な手段で手を打った。
1年が経ち、2年が経っても、私の心は夫が亡くなる以前同様には戻らなかった。
夫の死から月日が経って、心の傷は多少癒えたが、それでも以前のようなやる気は失せて、とても経営を続けていく気力などなかった。
何もかもがもうどうでもよくなった。
介護業界では、いつもどこかで誰かが他界する。
そんな話を耳にする度に、私の心は傷ついた。
そして思い出す。あの光景を。
私には3人の子供が居て、既に孫も存在している。
夫の予期せぬ死で、子供達も皆、心に大きな傷を受けた。
私には自問自答の日々が続いた。
幸せとは何か?
人としての価値とは何か?
心の豊かさとは何か?
変わらない事が美徳なのだろうか?
社会的地位や資産がある事に価値はあるのか?
そうして私は決断した。
経営者であり続ける事は私にとって苦行でしかない。
どう生きるかは自由。
命は時間の積み重ね。
私にしか出来ないサポートを必要としている大切な存在はすぐ傍にいる。
残された人生、その人々に寄り添い、心穏やかに生きよう。
そこから様々な方法を思案して、事業譲渡という結論に至った。
引き継いでくださる法人様には感謝しかない。
全てを壊して失くしてしまう事も私の視野にはあったのだから。
これからはビジネスからは遠く離れたところで、純粋に人の幸せだけを祈る存在になりたい。
これまで私を、華桔梗を支えてくださった全ての人々に心から感謝申し上げる。
本当に、本当に、ありがとうございました。